相続税は、対策をせず「そのまま」支払ってしまうと最も高くつく税金です。企業価値500万ユーロの事業には、税率区分Iでも最大30%の税が課され、一世代ごとに150万ユーロもの事業資産が流出します。ドイツ相続税法 §§ 13a/13b ErbStG は大幅な優遇措置を用意していますが、その活用には事前の準備が不可欠です。
2つの優遇オプション
標準優遇(85%非課税)
適格事業資産については、相続税・贈与税の85%が免除されます。残る15%が課税対象となります。適用要件は以下のとおりです:
- 管理資産(Verwaltungsvermögen)比率 ≤ 90%(超過した場合、優遇は適用不可)
- 賃金総額要件:5年間の賃金総額 ≥ 基準賃金総額の400%
- 最低保有期間 5年
オプション優遇(100%非課税)
以下のより厳格な要件を満たすことを条件に、全額が非課税となります:
- 管理資産比率 ≤ 20%
- 賃金総額要件:7年間の賃金総額 ≥ 基準賃金総額の700%
- 最低保有期間 7年
重要:優遇を失う「有害行為」にご注意ください
売却・事業廃止・過大引出などにより最低保有期間の要件に違反した場合、優遇措置は遡及的に失効します(譲渡の場合は期間按分)。相続税はその時点で改めて課税され、直ちに納付期限が到来します。なお、相続税には § 233a AO(ドイツ租税通則法)による延滞加算利息は発生しませんが、§ 28 ErbStG に基づき納税が猶予されていた場合には、無利息の初年度経過後、月0.5%(年6%、§ 238 AO)の猶予利息が発生します。例:100万ユーロの優遇を受けていた場合、4年後の売却により、6桁規模の追徴税額が即時に発生する可能性があります。
優遇対象となる資産とは
§ 13b ErbStG により、以下が優遇対象となります:
- ドイツ国内の資本会社の持分(25%以上)
- EU/EEA域内に所在する資本会社の持分(25%以上)
- 農業・林業資産
- 共同事業体(KG、OHG、GmbH & Co. KG)の事業資産
優遇対象外となる資産(管理資産)とは
ご注意:管理資産の比率が高すぎる場合、優遇措置は適用されません。典型的な管理資産は以下のとおりです:
- 第三者に賃貸している不動産(事業と一体運用されている場合を除く)
- 有価証券および同種の債権
- 美術品、貴金属、コイン
- 企業価値の15%を超える流動資産・債権
最も重要なポイント:承継の5年前からのストラクチャリング
予定される承継の5年ないし7年前から準備を始めれば、あらゆる打ち手を活用できます:
- 管理資産の圧縮:余剰流動性を事業用資産(機械設備、事業投資、運転資本)へ振り向けます。
- 賃金総額の確保:賃金総額要件を満たすため、承継前に人員体制を安定した水準に維持します。
- 持分構成の最適化:25%未満の持分は優遇対象として移転できません。必要に応じて持分の集約や組織再編を行います。
- 基礎控除の複数回活用:個人の基礎控除は10年ごとに新たに適用されます。早期に贈与すれば、2サイクル分の控除を活用できます。
基礎控除額の詳細
| 受贈者・相続人 | 基礎控除額(10年ごと) |
|---|---|
| 配偶者・パートナー | 500.000 € |
| 子(父母それぞれから) | 400.000 € |
| 孫 | 200.000 € |
| 父母(相続の場合) | 100.000 € |
| 兄弟姉妹、甥・姪 | 20.000 € |
実務でよくある失敗例
- 着手が遅すぎる:世代交代の1〜2年前からでは、本格的なストラクチャリングには時間が足りません。
- 流動資産が管理資産に当たることの見落とし:銀行口座の200万ユーロが、優遇措置全体を覆すことがあります。
- 賃金総額要件の軽視:承継前の人員削減は、優遇措置の適用を危うくします。
- 評価問題の未整理:税務上の評価額は市場価値と大きく乖離することがあります。評価方法の選択が重要です。
事業承継を、計画的に。
私どもは、税務上最適な事業承継に向けて、お客様と平均5〜7年をかけて取り組んでまいります——優遇適用へのロードマップ、管理資産チェック、キャッシュプール戦略、公証人手続きのサポートを含めて。